Heychanの「今日の一言」SS

久々に、映画一本。
なんとなく、ずっと見たいと思っていた映画「シサム」を、
公開終了ギリギリで見てきました。
（東京では上映館の９割方が終了しちゃったタイミング）(^^;)
やっぱしスクリーンで見てきて良かった！


映画は、オープニングでアイヌの夫婦とその子供の
穏やかな日常に、何かが起こる？という引き(^^;)を描いてから
北海道は渡島半島の先っぽにある松前藩の武家の
次男（主人公）とその兄が白糠（シラヌカ）へ交易に行く、というところから始まります。

ちなみにざっと見たら、松前から白糠って直線距離で東京－京都くらい。
海路になるからもっと大変だよなぁ。

＜以下、ネタバレ含んでちょっと長く続く＞

兄は、”出来た人”らしく、弟はちょっと劣等感を感じているらしい、と
まぁ良くあるパターン（笑）。
兄は弟に、交易の相手を”蝦夷（えぞ）”ではなく「アイヌ（”人間”という意味）」と呼ぶように、と諭すんだけど
この兄にしても、まぁ藩からの方針に従っているだけかもしれないけど
交易の対価（アイヌから受け取る商品に支払う米の量）を一方的に減らすという
アイヌに対しての不利益を行うことについては、何も感じていないように見える。

そして、旅の途中で兄が、家からついてきた下男に殺されてしまい
弟も、敵を討とうとして返り討ちに遭って傷を負い
行き倒れたところを、アイヌの集落で助けられて
傷が癒えるまでをこの集落で過ごします。

ちなみに、ニホンゴを話せるアイヌも二人ばかり出てきますが
（まぁ、こういう設定にしないと話は全く進まないよね）(^^;)
殆どのアイヌ役の人がアイヌ語しか話しません。これはちょっと凄い。
字幕がつかないところもあって、意味が分からなくても引き込まれる。
あと、アイヌの暮らし、風俗がけっこうしっかり描かれている
（と、全く疎い和人の自分には感じられる）のも、丁寧な映画なのではないかと思います。

時代はちょうど、シャクシャインの戦いの頃、ということで
東の方から始まった和人とアイヌの争いが、西の白糠の方まで波及して
主人公の居るコタンは蜂起には加わらなかったものの、
結局みんなが戦いに巻き込まれてしまう。
この戦いの描写が、和人の鉄砲で殺されるアイヌ、アイヌの弓矢で殺される和人
ものすごくリアルで、見ていてほんとに痛い。
（パンフレットによると、あえて強調して表現したそうです）
そんな中で主人公は仇の下男と出会うが
彼は実は、幕府の命を受けた津軽の隠密で、松前の不正交易を調べて
密書を届けるところを、やはり負傷して
冒頭のアイヌの女性（夫と子供を和人に殺されていた）に助けられていたのでした。

密書が届けばアイヌへの扱いが改善される、と信じて
苦悩の末に主人公は下男を逃がす手助けをするが
結局、戦いの混乱の中で下男もアイヌの女性もあっけなく殺されてしまって
生き残った主人公は失意のうちに松前に戻る。
しかし、その後（おそらく）故郷を捨ててアイヌの地に戻って
和人のアイヌへの不正や暴力行為の記録を、それがいつか誰かに届いて
アイヌの暮らしが良くなることを信じて、書き続ける、
というところで物語は終わります。

しかし、今の自分（たち）は、今現在に至るまで
アイヌへの差別・迫害は続いていて、主人公の望んだ未来は実現しなかったことを知っている。
そして、出自や価値観の異なる人たちが、いまでも戦いを続けて死ぬ人が居る。
そういうことを考えると、重い映画だったなぁと感じます。

「和人の作ったアイヌの映画は見たくなかった」という、アイヌの方の発言も見かけました。
僕個人としては、しかし、北海道、アイヌ（と和人）、そしておそらくほぼ史実（和人の残したものにしろ）に
基づいているできごとを丁寧に描かれたこの映画を見られて
いろいろモヤモヤしたことを考えさせられることも含めて
良かったなぁ、と思います。
”ウェン　シサム”（悪い隣人）と呼ばれることの無いように生きていけたら。

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